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2018年11月28日 ・・・ やはり東洋、生命

その昔、元号が平成に換わる直前の昭和の末期、
NHKで、たぶんNHK特集だったと思いますが、
「誕生」というある産婦人科医を取材した番組が放送されました。

その医師の名は三宅廉先生と言われ、
神戸にあるパルモア病院の創設者です。

人間は母親の胎内で生を受け、
その後十月十日の時を経て
外の世界へと旅立っていきます。

この旅立ち、誕生の前後は苦しい道のりで、
医療技術の発達していなかった昔は、
ここで生命を落とすことがよくありました。

にも関わらず、セクショナリズムの激しい西洋医学は、
母胎に生命を宿している時は産科、
出産の後は小児科と、
生命にとって極めて大切な分娩前後の時期が、
まったく別の診療科目で診られるという現実がありました。

そこに疑問を感じ、産科と小児科が連携を取り、
分娩前後を通してひとつの生命を育むという
日本初の周産期医療を実現したのが、
小児科医であった三宅廉医師です。


「誕生」の中では、そんな三宅医師の思いと
パルモア病院の活動が紹介されていて、
ビデオに録ったそれを何度も見返していました。

その数年のち、縁あって岡山の産婦人科病院の
経営コンサルタントをすることになり、
その病院長に「誕生」のビデオをお渡ししたところ、
その先生は、パルモア病院の三宅医師の元で
医療に当られていたということが分かり、
とても驚いた記憶があります。

その院長は、現在岡山市の「サン・クリニック」という
産科小児科併設の周産期医療を実践する医院を運営されています。


先週土曜日の17日、
地元広島で国際交流に関するシンポジウムがあり、
自分もパネルディスカッションのパネラーの一人として、
インドの支援活動について話をさせていただきました。

そこで基調講演されたのが、
中米コスタリカを支援する神戸の方で、
その方は助産師でもあり、
講演の中でパルモア病院の名前も出てきました。

パルモア病院という言葉を聞き、
久し振りに周産期医療のことを思い出しました。


本当の意味で役立つ海外支援というのは難しいものです。
以前は、日本のODAは設備を作ってもその後放置状態で、
長期的な貢献になっていないということがよく話題になりました。

貧しい国に資金や物資の援助をすることは大切ですが、
貧しさが絶対的な不幸の源であるとは限りません。
経済的に豊かな日本人よりも、
貧しくても明るい笑顔で日々生きている途上国の人たちはたくさんいます。

どこの国にもその国独自の文化があり、
それを経済的豊かさで破壊することは、
利便性は提供できても、
その国、民族の根底に持つ大切なものを
なくしてしまうことになりかねません。

自分が関わっているインドでも、
職業差別制度であるカースト制に起因する貧困の連鎖、
児童労働の問題、
昨今の大気汚染、石油化学製品による環境汚染などは、
支援国の力を借りてでも早急に解決する必要がありますが、
その他文化的要素に関わる問題については、
部外者である外国人は、安易に口出しすべきではないと考えます。


そうした中で、周産期医療というのは、
どこの国、民族にとってもとても大切な医療視点だと感じます。

今も医療設備が整わず、
また貧しさゆえに十分な診療機会を得ることができない人の多い途上国では、
昔の日本のように、
分娩時や乳幼児期の死亡率が高いことはよく知られていて、
これは絶対に解決していかなければならない問題です。


周産期医療とは、分娩の前と後を結びつけるもの、つながりです。

最近「生命」というものをあらためて深く見つめ直す機会を持ち、
生命の本質は一言で言うならば、
『すべてのもののつながりの中にある』ということを再認識しました。

つながり、これは生命の本質であり、
またこれからの時代の価値観の中心となる東洋の理でもあります。

久し振りに周産期医療のことを思い、
その価値、必要性を再び感じるとともに、
やはり価値あるものの中には、
生命、東洋の理が関わっているということを知りました。


新生児として生まれた後、
成長のための栄養源となるのは母親からもらう母乳です。

日本では、1970年代に西洋化によって
母乳育児に代わるミルク信仰が生まれ、
母乳育児の率が大きく下がりました。

牛乳や粉ミルクは母乳よりも栄養価が高く、
赤ちゃんの発育もよくなるものの、
それは自然の摂理に反した不自然なことであり、
その後は少しずつ母乳の価値が見直され、
昨今は母乳育児の率が上昇傾向で、
2015年には五割を越えたとのことです。
  <【図解・社会】母乳育児の割合(2016年8月):時事ドットコム>

母乳育児のメリットは様々あります。

赤ちゃんが生まれてすぐ、母親から母乳を求めても、
最初はなかなか母乳が出てきません。
それを赤ちゃんが懸命に吸うことにより、
あごの筋肉の発達が促されます。

また出生後数日から十日ぐらいは体内の老廃物を
便として体外に排出すことが大切で、
そのためにも、あまり多くの栄養を摂らないことが望ましく、
母乳をたくさん飲めないということは自然の理に適っています。


生まれた直後、最初は入れることよりも出すことが大切で、
まずはそれがはじまりです。

呼吸も呼というはくことがあり、その後に吸という吸う動作が続きます。
陰陽は、陰があってその次に陽があり、
自然の中の陰陽二元性の共生には、
順序の理があるのです。


やはり自然の理、生命、東洋の理は偉大です。
今回、周産期医療、そしてそこから母乳育児のことを思い、
またあらためて生命の尊さを知りました。

2018.11.28 Wednesday  
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