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2018年2月1日 ・・・ 植物性器官

昨日ご紹介した解剖学者であり発生学者でもある三木成夫氏、
三木氏の発表される論は実に偉大であり本質的であり、
その研究内容に触れるたびに頭の中に衝撃が走り、
探していた大切なジグソーパズルのピースを見つけたような、
あるいは脳内で神経細胞シナプスが広がり、
頭の中の情報が急速に有機的なつながりを持ちはじめたような、
そんな感覚を覚えます。

胎児の世界―人類の生命記憶 (中公新書 (691))胎児の世界―人類の生命記憶 (中公新書 (691))
三木 成夫

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今から十年前、南インドの児童養護施設を初めて訪ねた時、
そこで暮らす子どもたちの底抜けに明るく透き通った笑顔に衝撃を受けました。
なぜこんな質素な生活の中で、
こんなにも幸せそうな表情ができるのか、
それは日本の都会で暮らす自分にとって、
すぐに理解することのできないものでした。

そこで思ったのが、
生活は質素でも、彼らの周りには豊かな自然があり、
贅沢ではないけれど健全な食生活、
そして適度な労働、肉体を使う環境があり、
彼らはそこから生まれる逞しくもしなやかな肉体を持っているということ。

そしてその高い身体能力には体の中心軸を正しく保つ高い体幹力が宿り、
彼らは硬い床に座っても、
どんな作業をしていても美しい姿勢を崩すことがなく、
その身体能力こそが、心を明るく保つ源なのだということを感じました。

これは偉大な教育者森信三先生の唱える
『教育の基本は立腰にあり』
という言葉の具現化です。

このことは十年前、帰国後すぐにレポートにし、
今もその感じ方は間違っていなかったと確信しています。
  <南インドで学んだ喜びと幸せ>(PDFフアイル)


この正しい姿勢を保つこと、
立腰(りつよう)の大切さはこれまで何度となく書いてきましたが、
これは森信三先生の言われるように教育の基本であり、
本来日本の文化を支えるべき、
最も大切な『身体文化』なのだと考えます。

インドの子どもたちの素晴らしい姿勢を見てください。








三木成夫氏は、人体を植物性の器官と動物性の器官、
この二つに分けてとらえていました。

植物性器官とは、栄養やエネルギーを取り込む器官、
吸収→循環→排出という流れで、
生きるための力とする部分、つまり内臓です。

それに対して動物性器官とは、知覚→伝達→運動という一連の機能、
餌を採るために必要な目や耳といった知覚を司る器官、
その指令を出す脳、その指令に従って動く骨や筋肉のことです。

三木氏は現代人はあまりにも脳を重視しすぎ、
人体の真ん中にある口から胃、腸、肛門に至る一本の管、
食物を消化吸収し、排泄するという最も大切な生命の営みを
ほとんど意識することがなくなっていることに危惧を抱いておられたそうです。


あまり上手なイラストではありませんが、
左の図は太極図、宇宙、生命原理の縮図です。
陰と陽が共生し、互いに真反対の属性を持ちながら相似形で、
二つで完全なる円を形成しています。



人体も同じです。
硬い骨格と軟らかい内臓、
脳と腸はどちらも渦を巻き、とてもよく似た形をしています。
脳は硬い頭蓋骨に囲まれ人体の上端にあり、
腸は柔らかい皮膚に包まれ胴体の下端にあります。

消化器官は上から下、口から入ったものが肛門に至り、
骨格周辺に集まった神経系、エネルギーの流れは、
ヨガではクンダリーニと呼ばれますが、
そのエネルギーは尾てい骨にあり、上に昇っていくものと言われています。

姿勢を正し、腰骨を立てるには、
中心軸である骨格を正しい位置に保つ必要があります。

イラストを見て分かるように、
中心軸の骨格と消化器官の流れは対を為す陰陽共生の関係です。

これは両方のバランスの上で成り立ってっていて、
片方は理想的だがもう片方に問題があるということはありません。
自然に互いのバランスを取り合おうとするものです。


ですから、今の日本人が正しい姿勢を保持できないのは、
消化器官、三木氏の言葉で言うところの
植物性器官の力が衰えているからだと言うことができます。

美食、過食、口に入れるものは軟らかいものが多く、
現代人は食べ物を噛む回数が極端に少なくなっています。

そして食べたものをキチンと吸収することができず、
その滞ったものが体脂肪や排泄しきれない老廃物となり、
メタボと呼ばれる肥満体が生まれます。

以前と比べ、日本の食卓には良質の植物性発酵食品が少なくなっています。
それがひとつの原因となり、
日本人の腸内環境は昔と比べて格段に悪くなり、
少し環境が変るとすぐに下痢をしたり便秘になってしまいます。


以前から、骨格の位置、姿勢を正すには、
その対極の関係にある消化器官という一本の管に着目し、
そこが理想の状態であることが必要であると考えていましたが、
三木氏の論を知り、その考えに裏打ちができた思いです。

また人体の中心軸を為す骨格と消化器官が共生関係であるように、
植物性器官(消化器官)と動物性器官もまた対を為す共生関係です。

そして植物性器官が人体の中心部分にあり、
動物性器官がその周辺にあるのを見て分かるように、
生命の根幹は植物性器官です。

この二つは安定の取れた関係であることが大切です。
けれど安定ばかりでは成長がありません。
時にはその安定を崩し、不安定さの力で進化発展していくことも必要です。

そしてその時の不安定さは、
根幹となる植物性器官が先行することが望ましく、
動物性器官のみが発達し、頭でっかちになってはいけないのです。

これは植物で考えれば容易に理解できます。
植物は根、そして太い幹の順番で発達することが望ましく、
これが逆になり、細い根や幹の上に大きな実りをたたえても、
少しの雨風で根っこから倒れてしまうことになりかねません。


これは昨日ご紹介した養老孟司氏の言葉にも通じます。
『子どもには塾通いさせるのではなく自然の中で感性を養う』
というのは、動物性器官である脳のみを重視するのではなく、
植物性器官に宿る『心』、その感覚を育てていこうということでしょう。

最近はマインドフルネスというのが流行っていて、
世界各地で様々な人が沈思黙考する習慣を持っておられます。

この思考を立ち止まらせるというのはまさに植物的ですね。
そこで感じられること、それが植物性器官からのメッセージです。


植物性器官を意識し、それを大切にし、
その流れをスムーズに保つことは極めて重要です。
そしてその結果、正しい姿勢、立腰を保つことができるようになります。

これはいくら声を大にしても足りないほどです。
いずれ別項を設け、そのことをまとめて書きたいと思います。

2018.2.1 Thurseday  
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