ヨガナンダ 心の時代のパイオニア
 ヨガナンダ > 日々の思い > 2018.1.30



ヨガナンダ



2018年1月30日 ・・・ 生命系の時代<2>

生命の特質を表す有名な言葉に、
エルヴィン・シュレディンガーが唱えた
『生命は負のエントロピーを食べていると言わざるをえない』
というものがあります。

シュレディンガーは、
「シュレディンガーの猫」で有名な物理学者です。


エントロピーとは乱雑さのこと。
熱力学の第二法則では、
宇宙は大局的には乱雑(エントロピー増大)な方向に向かい、
その動きは不可逆であるとされています。

言葉は難しいですが、その意味することは簡単です。
秩序あるものも、時間とともに
それは必ず無秩序なものに変わっていくということ。
一枚の皿を落として割るのは簡単ですが、
その割れた破片から元の皿を作り直すのには莫大なエネルギーを要します。
10度の水と50度のお湯同量を混ぜると30度の水ができますが、
30度の水を10度と50度のお湯に戻すことは簡単ではありません。

広いグラウンドに描いた美しい砂絵は、
いつか風とともに消え去ってしまいます。
秩序から無秩序への変化です。

逆に何もないグラウンドに風が砂を運び、
いつしか美しい文様を描くことは、
絶対あり得ないことではありませんが、
可能性としては限りなくゼロに近いことです。
つまり無秩序から秩序は生まれないということです。

『覆水盆に返らず』
この世にあるものは、総体的にはすべて無秩序、
エントロピーが増大する方向に向かっています。


ところが生命を持つもの、その内部は例外で、
ひとつの秩序だった生命の営みを育み、
それが恒常性、つまり長期間維持され、
その中からさらに秩序を持った新たな生命を誕生させます。

これが負のエントロピー、つまり秩序というもの、
それを生命は食べて生命活動をしているということです。

けれど総体としてのエントロピー増大の法則は変りません。
生命、人間だったら食物や空気からその生命を育みますが、
その体内に取り入れた食物や空気から秩序(負のエントロピー)を奪い、
それによって秩序だった状態を維持しているということ。

つまり人間が口にする食べ物、野菜、肉、魚、果物等は秩序だったもので、
それが排出された状態、エネルギー、体液、排泄物となった時は、
極めてエントロピーが増大した無秩序なものになっているということです。


生命を生命体という考えで見ると、その寿命は有限です、
そして寿命が尽きた生命体は、
内部の秩序だった状態を維持しておくことができず、
時の経過とともにエントロピーの法則に則り、
無秩序な状態へと変化していきます。
熱力学ではこれを熱死と言い、
人間でいえば土に還るということです。

けれど生命系という考え方では、
すべてのものが生命を持っていて、
そこに生命を持たないものは存在しません。

では生命体における死、熱死というものをどう捉えるかというと、
ひとつの生命体(生命系)の死は、
より大きな生命系の中に取り込まれるということ。
人間という小さな生命系の死は、その生命系が崩れ、
より大きな地球生命体ガイアの一部に取り込まれるということです。

生命系を大きなあぶくと考えると分かりやすいでしょう。
ガイヤという極めて大きなあぶくの上に、
様々な動植物、すべてのものの生命系のあぶくが乗っていて、
それらの死はあぶくがはじけるということです。

それでもってそのあぶくは消えてなくなりますが、
そのあぶくを構成していたものは、
大きなあぶくの一部となって生き続けるのです。

そして生命の誕生とは、
さの大きなあぶく、または無数にあるあぶくの中から
ポコッと湧き出てくるものと理解すると分かりやすいでしょう。


これは数年前、神社のある山の参道を落ち葉を踏みしめながら
歩いている時に思いつきました。

自分という個体、周りに茂っているたくさんの木々、
飛び交う野鳥、落ち葉に隠れている昆虫や細菌たち、
それらすべてが生命を持ち、その中に生命の循環という“系”を持っています。

そんな懐の深い自然、生命というものを感じながら、
生命というものは永遠不滅なもの、
ただその営みを司る系が飲み込まれたり生まれたり、
時とともにそのあり方を変えているのだと感じたのです。


熱力学の第二法則によると、
この宇宙総体はビックバンで誕生した直後から無秩序な方向へと進み続け、
その動きは不可逆であり、決して逆戻りすることはありません。

だとしたら、生命とはこの宇宙の流れに逆らおうとするものであり、
それは極めて美しい生命の法則に似つかわしいものではないと感じます。

いつしか生命の法則が最も深いところまで解き明かされる時は、
きっと一元的不可逆と考えられている時間の流れが
より柔軟で可逆的なものだと理解される時なのではないかと考えます。


<補足>

シュレディンガーが説いた「シュレディンガーの猫」は、
量子力学の世界の不思議さを説いた実に興味深い思考実験です。
  <シュレーディンガーの猫 - Wikipedia>

人間は日常五感で感じる世界をすべてと思いがちですが、
人間が感じ取れるものはこの時空のほんの一部、断片であり、
リンゴが木から落ちる常識的なニュートン力学の世界から外れたことが、
ミロクやマクロの世界では当たり前のように起こっているということを
このシュレディンガーの猫は分かりやすく教えてくれます。



生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)
シュレーディンガー Erwin Schr¨odinger

岩波書店 2008-05-16
売り上げランキング : 6860

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2018.1.30 Tuesday  
ひとつ前へ ホームへ メニューへ 次へ
Link Free
Copyright 2010 Sakai Nobuo All right reserved.