ヨガナンダ 心の時代のパイオニア
 ヨガナンダ > 日々の思い > 2017.10.23



ヨガナンダ



2017年10月23日 ・・・ 判断のバイアス

昨日の選挙は与党の圧勝という結果で終わり、
日本がこれから改憲という大きなハードルをどう乗り越えるのか、
今後の将来を決める大きな決断を、
心して見守っていきたいと思います。


昨日書いた左翼政党のチラシのこと、
『 ・・・ 米軍のヘリがまた墜落した。 県民の命を何と思っているの。』
このことが頭から離れません。

政治に限らず、主流派と対立する組織というのは、
主流派の批判や揚げ足取り、
感情論で自分たちに注意を向けようとする傾向が強いように感じます。


その昔、スティーブンスピルバーグ監督の出世作となった
ジョーズが全米で大ヒットした時は、
アメリカ中の海水浴場の遊泳客が激減したそうです。

実際は海でサメの被害に遭う人はほとんどいないのですが、
サメに食べられて命を落とすというのは、
溺れて死ぬよりもはるかに恐ろしいことなので、
その恐怖心が大きな不安となって足を遠ざけたのでしょう。

ヘリの事故も同様です。
あの日突然頭上から軍隊のヘリコプターが落ちてくる考えたら、
それは恐ろしくないわけがありません。
たとえそれが自動車事故に遭う確率の数百分の一であったとしてもです。

人間は感情の生きものです。
論理よりも感情が優先し、
感情が高ぶった時には、
理屈に合わない選択をしたり行動をすることがよくあります。

個人レベルではそういった判断も許されますが、
人の上に立つリーダーとなるべく人たちは、
そういった感情的判断を是正し、
正しい方向へと導いていく義務があります。

それを一緒になって感情的不安を煽るようなことをするとは ・・・ 、
やはり愚の骨頂と言うしかありません。


判断、ここでは主に選択ということですが、
盲目の学者シーナ・アイエンガー氏の言葉が、
実に有益な知恵を与えてくれます。



上の動画で述べられていることです。

彼女が若い頃日本で学んでいた時、
京都の喫茶店に行き、緑茶を頼みました。
彼女は緑茶に砂糖を入れるのが好きなのでそう頼むと、
何度も丁寧な言葉でウエイターに断られ、
最後は店長が出てきて、
「あいにく砂糖がございません...」
と言われたそうです。

そこで今度はコーヒーを頼むと、
そこには二袋の砂糖が添えられていたとのことです。

米国人の考え方では、
お客さんが好みに基づいた分別ある要求をする限り、
叶えてもらう権利があります。

バガーキング曰く、
“自己流で召し上がれ”
スタバ曰く、
“幸せは選択肢にある”

でも日本人の考え方では、
無知な人を護るのは我らの役目 ・・・


日本人の特質は、よく言えば素直で従順、
悪く言えば自分自身で自由な判断することをよしとせず、
『長いものには巻かれろ』的な考え方を尊ぶ傾向があります。

これも上の動画に出ている話です。

六つの文字を並べ替えるパズルを用意し、
それを白人系米国人と日本人街のアジア系米国人、
それぞれの子どもたちに見せ、作業をしてもらいます。

パズル、マーカーペンともそれぞれ六種類あり、
最初のグループはパズル、マーカーともにその子自身に選んでもらい、
二番目のグループにはスミスさんという実験者に選んでもらいます。
そして第三のグループはその子たちの母親にパズルもマーカーも
選んでもらいました。

実際に作業する量はどのグループの子どもたちも同じですが、
結果を見ると、白人系米国人の子どもたちは
自分たちでパズルとマーカーを選択したグループが、
他のグループより2.5倍も多くの作業ができたのに対し、
アジア系米国人(たぶん日系人)の子どもたちは、
母親が選んだグループが最も高い成果を得ました。

一般的に米国人(アングロサクソン)は、
他人から命令されるのを好まないのに対し、
日本人のメンタリティーを受け継ぐ日系人の子どもたちは、
権威者(この場合母親)からの期待に大いに応えようとします。

彼にとって選択とは、
個性の明示や主張の手段だけではなく、
信用し尊敬する人たちに選択をゆだねることで、
社会の調和を築く手段でもあります。


この動画で面白いと思ったのは、
この実験結果を伝える中で、日系人の子どもの言葉を話した場面です。

なつみという子は、別れ際スミスに駆け寄り、
ぴったりくっついて言いました。
“ママの言う通りにしたってママに伝えてくれる?”


この女の子の気持ち、日本人ならものすごくよく分かりますね。
もし日本でこの講演をしたならば、
この場面できっとみんな爆笑したことでしょう。

けれどこの動画では、
この場面ではまったく観客からの反応がありません。
たぶんネイティブの米国人には、この感覚が理解できないのでしょう。


昨日も書いたように、
やはり日本人は権威者に対して “お上” という感覚があり、
そこが下した判断や結論に従順であり、
深く考察して異議を唱えないのが善という感覚があります。

そう言えば、もう二十年近く前のことですが、
知り合いの自然保護活動家が有名な経営者団体に講師として招かれた時、
その人が市民運動家として行政に公共工事差し止めの陳情をした過去を
一部の団体のメンバーの人が知り、
「行政に刃向かうような人は講師にはふさわしくない」
と文句をつけたそうです。

今でもこういう体質は変わらないのかもしれません。
とにかく上から与えられたことに対しては従順に振る舞うというのが、
古きよき日本の美徳なのでしょう。
すべていい面ばかりではありませんが ・・・ 。


人間は感情によって思考や判断が大きく左右されます。
また民族性によって判断基準は大きく異なります。

シーナ・アイエンガー氏の他の動画には、
与えられた周辺条件によって、
いかに選択行動そのものが大きく影響を受けるかという話が
いくつも出てきます。

繰り返しますが、人間は感情の動物です。
すべてのものごとを澄んだ目で捉えることができれば素晴らしいですが、
それは不可能です。

また先入観というものがあるからこそ、
脳はその働きを省略し、効率よく機能を保つことができています。

まずはそういったことを自覚すること、
これが “無知の知” です。

そしてその次に、自分の思考、
あるいは人間の一般的な思考には
どのようなバイアス(偏向)がかかっているのか、
それを知った上でその偏りをなくしていくことが知恵となります。


まずは自らが高い判断力を身に付けること、
そうすれば、自ずと冒頭に書いたような感情操作はなくなり、
政治も本来の役割を果たせるようになるのだと考えます。



選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)
シーナ アイエンガー 櫻井 祐子

文藝春秋 2014-07-10
売り上げランキング : 4257

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2017.10.23 Monday  
ひとつ前へ ホームへ メニューへ 次へ
Link Free
Copyright 2010 Sakai Nobuo All right reserved.