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2017年8月30日 ・・・ 平和ボケ日本

『日本人は水と安全はタダだと思っている』

これは昔からよく言われる言葉ですが、
その容易に手に入ると思われていた水と安全も、
近年危うい状況になってきています。

近い将来世界的に水不足に陥ることは間違いありません。
日本列島は水の豊かな国土で、
世界の中では恵まれた条件にあるものの
貴重な水資源の元となっている水源地周辺の土地を、
中国をはじめとする外国資本の手による買い取りが進められていることが、
ここ数年問題となっています。

平穏な暮らしを維持するための安全保障を考えた場合、
中国との領土問題、北朝鮮との関係、
先の水資源、食糧自給率の低下、テロ、異常気象、
課題とすべきことは決して少なくありません。

日本は豊かな自然に囲まれ、
陸続きで国境を接する国がなく、
他国に侵略された歴史が無いためか、
迫り来る危機への対処に脳天気なほど意識が向きません。
これは日本人の持つ性善説もひとつの要因かと感じます。


今から22年前の1995年、
阪神淡路大震災が起こった二ヶ月後の3月20日、
東京の地下鉄車内に猛毒のサリンが撒かれ、
乗員や駅員13人が死亡し、6300人もの人が負傷しました。
これは日本人にとって忘れることのできない事件です。

その時、偶然現場に居合わせた作家の辺見庸が、
目の前に現れた異様な光景をこう述べています。

倒れた人々を助けるでなく、まるで線路の枕木でも跨ぐようにしながら、一分でも職場に遅れまいと無表情で改札口を目指す圧倒的多数の通勤者たち。

道路のこっち側半分はほんとうに地獄のような光景だった。
それなのに道路のあっち側半分は、何事もなくいつもどおり職場に通勤していく人々の世界なんです。



この当時持っていた日本人の危機意識、精神構造は、
今もまったく変わることがありません。

昨日、北朝鮮が日本の上空を通過するミサイルを打つという
暴挙に出ました。
早朝、各地でJアラートがなり、一部の交通機関は運転を見合わせ、
ニュースもその話題で持ちきりでした。

けれど『赤信号、みんなで渡れば怖くない』の如く、
個々の日本人の持つ危機感は、相変わらず希薄なままです。


会社のメール www 声に出して笑ったわ


地下鉄サリン事件当時は、
まだ社畜という言葉はなかったように記憶していますが、
所属する組織のため、懸命に、仕事以外のことは何も考えず、
ただ与えられた職務をまっとうする、
これは社畜の姿そのものだと感じます。

家畜とは、人間の食糧や労働の手助けのために生かされている存在です。
食肉となるためのブロイラーは、
運動のできない狭いゲージに入れられ、
高タンパクの飼料を、ただ肥え太る目的のために食べ続けされています。
これが無駄のない効率的な飼育方法です。

日本人の暮らしもこの家畜の環境と似ています。
子どもの頃は学校に通い、たくさんの知識を詰め込まれ、
それをより正確にアウトプットし、試験で高得点を取ることを求められます。
社会に出てもより会社を成長させ、
よりお金を稼ぐためにはどうすればいいのか、
それに向かって突き進むのがエリートとしての望ましい姿です。

新たに知った知識の背景はどんなものなのか、
それを知る意味、活かすにはどのようにすればいいのか・・・、
自分は何のために生き、学んでいるのか・・・、
そんなことをいちいち考えるのは時間の無駄なのです。

狭い価値観、全員がほぼ近似した目標に向かって突き進む、
これを善とするのは均質化した今の日本社会の暗黙の了解です。

これはまるで食肉としての価値を高めるために
飼料を食べ続けるブロイラー、
より速く走るために、
斜眼帯で前しか見えないようにされている競走馬のようです。


戦後日本は、この効率を求めてきたがゆえ
大きな経済発展を遂げることができました。

日本の大学でも、より効率的、実践的なものを尊び、
文化系では文学、社会学よりも経済や法律、
理科系では、理学よりも工学といった具合に、
基礎学問を重視してこなかったことにも表れています。


効率を求めるのは悪いことばかりではありません。
特に社会が安定し、その成長が長期的に見込まれる時には、
効率化のメリットは最大限に発揮されます。

環境が安定して変わらないのであれば、
ただ同じパターンを繰り返し行った方が、
無駄なく大きな成長を遂げることができるのです。


環境が大きく変わることに対処するための危機意識を常に持つということは、
決して効率的なことではありません。

ただ、今の社会は自然から大きく離れ、
極めて高度に組織化された基盤の上で成り立っていて、
それがいつ崩れるか分からない状況になった時、
危機意識が薄く、効率化しか身に付いていない今の日本人の状態は、
極めて大きなリスクを持っています。

そしてそういった危機的なことが、
日本でいつ起こっても不思議ではない状況になっています。


水、食糧、電気、ガス、水道、交通機関、インターネット網、
これらインフラにもし少しでも障害が発生すれば、
日本中が大混乱に陥ることは目に見えています。

日本の社会を支えている基盤は実に脆いガラスの器のようなものであり、
それがいつ崩れるか分からないという危機感を持ち、
そのための対処方法を、社会全体と個人で、
もっともっと突き詰めていかなければならない時が来ています。

地下鉄サリン事件の時は、
倒れている人を跨いで会社に向かう人が大勢いても、
それで社会が混乱することはありませんでした。
それはあの時は、救急医療、警察の体勢がしっかり機能していたからです。

けれど社会全体が何らかの原因で大きなパニックに陥った時、
今の日本人は右往左往するだけで、
まともに対処できる人はほとんどいないでしょう。


地下鉄サリン事件の実行犯の多くは、
一流の大学を出た若者たちであったことが、
当時大きな話題となりました。

そしてマスコミはこぞって、
「なぜ高い学歴を持った若者たちがこんなことを ・・・ 」
といった論調で取り上げていましたが、
そのことに、その頃からとても違和感を覚えていました。

当時のオウム真理教の教義は、
当然のことながら、すべてが邪悪なものだったわけではありません。
伝統的なヨガの教義を理論的に解説し、
かつ解脱という精神世界で目指すべき頂点に至る道を、
体系的かつ具体的に修行プログラムという形で示していて、
そこに偏差値秀才である若者が惹かれていったのです。

本当の精神世界、心の世界の修練の道は、
明確に方法論として提示できるものばかりではありません。
また自分がどこまで成長できたかということは、
定規で測ったように数値化したり、段階化できるものでもありません。

けれど受験戦争で明確な数値目標を与えられ、
それに勝ち抜いてきた彼らにとって、
そんな暗中模索するようなものよりも、
具体的な修行プログラムを一定量こなせば、
正悟師、正大師といった精神世界に於けるエリートになれるという
オウムの教えは、
とても楽で魅力的なものであったことは想像に難くありません。


効率化を旨とする現代人は、属する組織に対して極めて忠実です。
そして忠実であるがゆえ、
地下鉄の通路でもだえ苦しむ人たちを見ても、
それを無視し、跨いで通り過ぎることができ、
尊師として崇めていた麻原彰光の命を受け、
地下鉄の車内にサリンを撒くことができたのです。

忠実とは、与えられた指示や価値観を絶対視するということ、
それは自らの判断を放棄することでもあります。

このホームページではこれまで何度も
『人間の持つ最も尊い能力は判断力である』と書いてきました。

自らが高い判断力を持つこと、
これが人間が人間たるゆえんだと考えます。

現代人を社畜、家畜のようだと、
あまりいい言葉ではない表現をしましたが、
この判断力が人間の持つ特性であるとするならば、
それが欠如した状態は、
やはり畜生の世界に近づいていると考えるのが妥当ではないでしょうか。


今の日本人は危機意識の欠如した平和ボケです。
この “ボケ” とは、テストで高い点数を取れないことでも、
会社で売り上げを上げられないことでもありません。

現在の置かれている状況を正確に判断し、
その対処方法を自らの知恵で考えることのできないことです。

真実があってもそれを見ざる、それを聞かざる、
そして真実を知っていてもそれを言わざる、
こんな三猿のような状態です。




外交をはじめとしたすべての面で危機意識の乏しい今の日本の状態は、
極めて危険であると言えます。

教育に於いても、知識偏重量産型詰め込み式の指導は改めるべきです。
もし22年前の地下鉄サリン事件の時、
エリート教育のあり方を考え直していれば、
今の日本は少しは違った状況になっていただろうと考えると残念です。

自らの意志と判断で現在の状況を捉え、行動する。
これがすてべに通じる安全保障の基盤となります。

2017.8.30 Wednesday  
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