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2017年1月5日 ・・・ 良心的価格

日々パソコンと向かい合っていると、
大量に消費するインクジェットプリンターのインクが
あまりに高額なことに頭を悩ませます。

よく知れているように、
プリンターは消耗品ビジネス、あるいはインク商法と言われる販売方法で、
安い価格でプリンターを販売し、
その後大量に消費するインクを高額にすることによって利潤を得ています。
けれどそれがあまりにも度が過ぎています。

交換用のインクは一本だいたい千円弱程度ですが、
たいていの家電量販店ではメーカー純正ではない他社製の互換品が、
純正品の六割程度の価格で売られています。

メーカーは純正品を買ってもらわなければ利益を確保することができないので、
互換品を使うと警告を表示したり、
メーカー保証が効かなくなると脅し(!)をかけています。

また物理的に互換品がインクとして認識しないようにしたり、
インク残量が表示されないように対策していることもあるようですが、
互換品メーカもそれに対応した新しい商品を開発し、
イタチごっこのようになっています。

それでもやはり純正品は、
「インクの一滴は血の一滴」と呼ばれるほど高額なため、
修理保証の効かなくなるリスクを抱えてでも互換品を使う人が後を絶ちません。
またどうせ故障をしても無償修理期間の一年を過ぎれば、
本体相当の金額以上の修理費を取られるのですから、
故障リスクはそんなに恐れる必要がないのです。

プリンターと交換用インクの価格を見ると、
ひどい場合はプリンターからインクの代金を引いた価格がマイナス、
つまりインクの価格が、インク付きのプリンター価格を上回っていることもあって
驚きます。

これでは健全な商売とは言えません。
互換品のインクは、ネットで売られている安いものは、
純正品の四分の一、五分の一といった驚異的低価格のものも珍しくありません。

また百円ショップでも互換インクが売られていることを考えれば、
いくら純正インクが高品質だとは言っても、
大量に生産することを考えれば、
製造原価はおよそ数十円、あるいは数円程度と考えられ、
それを千円弱の値段で売るのですから、
インクビジネスはまさに笑いの止まらない商売です。


消耗品、交換品で儲けるのはプリンターだけではありません。
スーパーで売られている洗剤でも、
キチンとした容器に入った商品よりも、
詰め替え用の簡易パッケージで売られているものの方が割高ということが
よくあります。

これはまずはその商品の愛用者になってもらい、
その後も継続して使ってもらうための、
『囲い込み戦略』と呼ばれるものです。

詰め替え用パッケージの多くは本体よりもほんの少し内容量が少なくなっています。
これは本体に残量があっても詰め替えられるようにするためと、
同一分量当たりの価格を比較しにくくするためです。

詰め替え用パッケージには、「環境に優しい」といった文字が並んでいますが、
それを買うよりも本体を新たに買い直した方が割安なら、
価格に敏感な消費者はそちらを買い、
古い本体はそのままごみ箱に捨ててしまいます。

環境に優しい詰め替え用があっても、
環境に優しくない価格設定がなされていれば、
そのスローガンは商売上の売り文句に過ぎないと評されても致し方ありません。


今愛用の電気シェーバーは数年前に買ったもので、
まだ一度も刃を交換したことがありません。

お風呂の中でカミソリを使うこともあり、
毎日使うわけではないのと、
いつも美波動多機能の上に置いているので、
刃が摩耗するスピードが遅いのです。
  (美波動は刃先の乱れた分子配列を整える力があります)

それでもかなり使っているし、またインドにも持って行く予定なので、
替刃を手元に準備しておこうと考え、
ネットで価格を調べてみました。

替刃はパナソニックのES9013というタイプで、
定価は税別で6000円です。
これをAmazonでは、今日現在税込4016円で売られています。

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ちなみに家の近くの家電量販店では税別5620円、
税込だと6070円になります。

ところが・・・、Amazonのカスタマーレビューを見て驚いたのですが、
この替刃は、替刃本体を買うよりも、
その替刃の付いた低価格シェーパーを買った方が安いようなのです。

そして調べてみると、同じ替刃を使うES-RL13-Kというシェーバーは、
今日現在なんと2480円、これは消費税、送料込みの価格です。

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そしてさらにはヨドバシ.comでは、
同じく消費税、送料、そしてゴールドポイントというのが230ポイント付いて
2300円、結局ここで買い求めることにしました。
インドにはこのシェーバーを持って行きます。

  4016円 (替刃、Amazon)
  6070円 (替刃、家電量販店)
  2300円 (刃を含んだ本体、ヨドバシ.com)


いずれも税込でこの価格、
これを知れば替刃だけを買う人は誰もいないでしょう。
そして替刃だけが必要な人は本体込みで買い、
その本体は新品のまま廃棄されることになるのです。


ケイタイ電話の業界では、今から一年ほど前、
ケイタイ電話本体の価格をゼロ円、または異常な低価格にしたり、
高額のキャッシュバックを与えて自分たちのキャリアに囲い込もうとする
販売戦略が見直されるようになりました。

これは売り手と買い手の正常な関係を求めれば当然のことであり、
他の多くの業界も、その価格設定というものを見直すことが求められます。


『良心的価格』という言葉があり、
これは一般的には単純に安いものに使われることが多いのですが、
あまりにもこれが行き過ぎて、安いものばかり求めると、
逆にそれが消費者の不利益につながることがあります。

価格を安くするために、
仕入れ業者に不当な値引きを要求しているかもしれません。
ブラック企業のように社員に過重労働を強いている場合もあるでしょう。
または表に表れないところで手抜きをしたり、不正をし、
特にこれが食の安全に関わることなら大問題です。

フェアトレードという言葉があります。
フェアトレード(Fair Trade : 公平貿易)とは、発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える仕組みです。 従来の一方的な国際協力・資金援助は、援助する側の都合によって左右され、継続性に欠けるという問題点がありました。

先進国が少しでも安く、売れるものを求めるがゆえ、
原産地である発展途上国の労働者たちが、
不当に安い賃金で酷使されているのを防ごうという動きです。


近江商人は『三方よし』の精神を大切にしていました。
三方よしとは、売り手よし、買い手よし、世間よし、
その商いに関わるすべての人たちに喜びを与えられる、
そんな商いが理想であるという教えです。
  <三方よしを世界に広める会>

そのためには、売り手だけではなく、
買い手である消費者もまたモラルを持たなければなりません。

いいものには適正な金額を支払う、
その価格が本当の意味での良心的価格です。

また何度もこのホームページに書いていますが、
スーパーの食料品では、『先入れ先出し』、
この原則を守るため、
「自分さえよければいい」との思いで、
食品棚の奥に手を伸ばし、
消費期限の少しでも新しいものを求めることは厳に慎むべきです。


今の投機的なマネー資本主義は完全に終焉を迎える時期が来ています。
その次に来るべきもの、アンチテーゼとなるべきものはいくつも表れていて、
そのひとつがこの本の中に書かれています。

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」
渡邉 格

講談社 2013-09-25
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この本のAmazonのページにある動画の中の言葉です。

私たちが目指しているのは、
パンをつくればつくるほど、売れば売るほど、
地域の自然環境がよくなって、
みんな幸せになれるようなパンづくりを目指しています。

なので、地域の自然な素材を丁寧につくる生産者から、

「正しく高く」ものを仕入れて、それを丁寧に私たちがパンにして、
「正しく高く」売るんです。


売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし、
さらには商いに関わるすべての人たちよし、それ以外の社会全体の人たちよし、
そして自然環境にもまたよし、
そんな大きなスケールでの三方よしを目指すべき時代が来たのです。

2017.1.5 Thurseday  
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