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2016年6月26日 ・・・ マルチ商法に思う

最近は地元広島で、いろんな会合に参加する機会が多くなりました。
本来あまり勉強会、セミナーといったものに顔を出すのは好きではないのですが、
現在関わっている人たちとの人間関係の中で、
お付き合いとか代理の参加とか、そんな形のことが多いのです。

好きでないことは極力しないというのがモットーではありますが、
だからこそ、その好きでもないことをしたり、
好きでもないところに参加するというのは、
自分にとっては未知の扉を開くような感覚で、
嫌な反面少しワクワクするようなところがあります。

好きか嫌いか、それをハッキリ表現することともに、
流れを受け入れる柔軟さ、
これもまた人生を楽しくする要素であると感じます。


数日前、あるマルチ商法のセミナーに参加してきました。
こういうのはもちろん大嫌いですので、
自らの意志で参加することは絶対にありませんが、
知人から自分の代わりに行ってくれと頼まれ、
「久し振りにこういうのも面白いかな~♪」という感覚で、
人間観察をするつもりで参加してきました。

セミナーの前半はそのマルチ商法の説明会で、
後半が、 “成功” とか “夢の実現” とか、
そういったテーマをその組織の成功者(!)が語るということになっていて、
今回はその後半部分から参加をしてきました。

後半開始時間ギリギリに会場となる少し大きめの会議室に入ると、
ほとんどの方が前半から参加されているようで、
会場の席はほぼ埋め尽くされていています。

参加者は四十代、五十代の主婦らしき方たちが主で、
お仲間同士楽しそうに話をし、
その体からはほとばしる熱気のようなものが伝わってきます。

この前向きで明るいポジティブな雰囲気は、
マルチ商法系のグループが持つ独特のもので、
こんな空気を感じるのは十年ぶりぐらいです。
十年、二十年前ぐらいは、
このようなマルチ商法のセミナーによく誘われて参加しました。
その当時のことを懐かしく思い出します。

マルチ商法で扱う商材は、
どこの組織も健康や美容に関するものが多いようです。
そしてその商材がいかに優れた画期的なものであるのか、
通常市販されているものにはどのうよな問題的があるのか、
そういったことが組織への勧誘の第一歩として語られます。

次に語られるのが潜在意識のこと。
マルチ系の組織では、
潜在意識の活用や成功哲学といったことが
セミナーのメインテーマとなることがよくあります。
前向きに潜在意識を活用すればあなたも大成功できる、
大金を手にすることができる、
そんな話を実体験を交えて延々と聞かされると、
誰しもがその気になり、
「何の資格も技術もない自分でも大金持ちになれるかも!」
と明るい希望を持つことができるのです。

さらにはこのビジネスで成功して幸せになれば、
周りの人たちをも幸せにできるという話にまでつながり、
ひとつのハッピーストーリーの完結となります。


それにしてもこういったセミナーに参加する人たちは純粋な人が多いですね。
講師として話をされるのはそのビジネスで成功を収められた方、
  (先日の組織では、成功を “成幸” という字に置き換えていました)
月収が何百万とか何千万とかいうその方の話を、
みなさん目を輝かせるように聴いておられます。

セミナーには自分のような組織未加入の人間だけではなく、
すでに加入してバリバリと活動している方たちもたくさんいて、
その方たちの熱気に触発され、
未加入の人もやってみようかなという気になるようです。

講師の方のお話は、潜在意識を活用し、
自分がいかに借金まみれの状態から大金持ちになったかということ、
それが実体験だけに面白いのと、
途中に随時Oリングテストなどで潜在意識の力を実証して見せたりするので、
聴いている人たちからは大きな歓声がわくぐらい会場が盛り上がります。

話の内容としては今まで本で読んだり聴いたりしたことがほとんどでしたが、
中には少し目新しい情報もあったりして、
モチベーションをアップできたこともあり、
それはそれで面白くて勉強になるいいお話でした。


そんな面白くて大金を手に入れる可能性のあるマルチ商法ですが、
世間一般には多くの悪評を受けていることは、
皆さんよくご存じの通りです。

ではなぜ悪評を受けるのか、
よく言われるのが、マルチをするようになると周りに強引な勧誘をし、
友だちを失うことになるということです。

たしかにマルチをしている人たちは、
まるでカルト(狂信的)集団にでも属しているかのように熱っぽく、
自分たちの組織の仲間の人たちとは懇意でも、
それ以外の勧誘しても商材を買ってくれない、
仲間になってくれない人たちには対しては、
少しずつ疎遠になっていったり、
批判的になってしまう傾向があるように見受けられます。

それはあくまでも傾向ということですが、
そういったことはこれまでも何度も感じ、
また他の人からも同様の声を聞くことがあるので、
一般的なものとしてあるのだと思います。

組織の外の人たちから見ると、
ひとつのものを絶対的に信奉するカルト的な人たちには、
視野や価値観が狭くなる危険なものを感じさせられます。


数年前、当時懇意にしていた女性から、
「サカイさんは外国への支援とか
 スピリチュアルなことに興味があるんですね。
 でしたら私のリーダーのような素晴らしい女性がいるので、
 その人ときっと話が合うので一度ご紹介します」
と言われ、同年代の、とても美しくエリート然とした女性と
お会いさせてもらったことがあります。

その女性は遠方から新幹線に乗ってやって来られて、
最初はどんな理由でわざわざ広島まで来られたのか、
その費用はどういったところから出しておられるのか、
いろいろ疑問だったのですが、
その方と最初はインドのこととかスピリチュアルなことを話していたものの、
結局その方のメインとされているのは理美容関係のマルチ商法で、
その勧誘のために全国を歩いておられるということが分かりました。

その方の話によると、
その商材が極めて優れているのと同時に、
その組織を作った外国人創業者が立派な人格者で、
その商材を売った利益の一部を国際貢献のために使っていて、
自分もこの商売をしながら貧しい国々への支援をしているのだとのことでした。

その方の扱っている商材のパンフレットは一応もらいはしたものの、
当然それを自分が使うつもりも人に勧めるつもりもまったくなく、
けれど話としては『志は同じですね』ということになり、
インドのホームを支援することにも興味があるということで、
その方たちのグループに声をかけて、
一度南インドまで団体で足を運んでみたいという話にまでなりました。

けれどその方にそれ以降何度もお便りをしたものの、
一度として返事が戻って来たことはありません。
その方が真に興味を持っているのは国際貢献ではなく、
そのマルチの商売のようでした。

彼女は話をしている中で、
「マルチ商法は、世間から言われなき批判を受けている」
と何度も憤慨する言葉を述べておられましたが、
残念ながら彼女の言葉や態度から、
マルチ商法を肯定する印象を持つことはまったくできませんてした。

その組織は国際貢献もしているとのことでしたが、
それはマルチ商法が持つ否定的側面への免罪符ではないのかと思います。
国際貢献をしているということはその商材、その組織に対する大きなPRになり、
また自ら感じるであろうマルチ商法に対する罪悪感を軽減さすことにもなります。

うがった見方かもしれませんが、
もし自分がマルチ商法の創業者だとしても、
その組織と同じことをするでしょう。
悪しく言われることとの多いマルチ商法の組織にとって
イメージ戦略は極めて重要です。


潜在意識を活用すれば、大きな夢が実現できるのは事実です。
またマルチ商法を用いれば、
今現在手元に資金や資格、技術、知識、そういったものがまったくなくても、
口と行動力さえあれば、
セミナー講師の成功(成幸)者のように大金を手にできる可能性があります。
そしてその道筋がある程度は見える気になるのですから、
それにのめり込んでいく人がいるのは当然です。

けれどそこには大きな危険性も同時にはらみ、
先に述べたように、それにあまりにものめりこみすぎてしまったがため、
周りの人間関係、家族関係を壊してしまうこともあります。

またマルチ商法は、売り上げや紹介者を増やせば増やすほど
上のランクに上がることができ、収益が増えるので、
無理な勧誘をしたり、
今のランクを維持するために多額の借金をして自ら商材を抱え込むなどして
破産に至るケースもあるようです。

マルチ商法の収益システムは実に上手く人間の欲望を喚起し、
なおかつそのシステム自体が自己増殖していくよう、
極めて緻密に作り込まれています。

数日前に行ったそのマルチ商法のグループも、
ネットで検索してみると『被害者の会』のホームページがあり、
借金や洗脳についての体験が綴られていました。


お金は生きるために大切なものですが、
それに目がくらんでしまっては、大切なものをなくしてしまいます。

マルチ商法が批判を受けながらも社会に広く根付いているのは、
今の時代の理に合致する面があるからです。

マルチ商法はネットワーク商法とも呼ばれていて、
一定の形を持たず、
水のように、アメーバーのように広がっていくその商売のあり方は、
旧来の問屋、小売店といった固定化された物流制度に取って代わる
陰の時代、水の時代の新たなる情報流通、物流の象徴的スタイルであるとも言え、
だからこそ近年急速に発達してきたのです。

しかしながらすべてが理想の形態であるとは言えません。
また究極の理想でないからこそ、
社会に広まっていったのだとも言えます。

究極の理想は『上善水の如し』、
水のように風のようにさりげなく爽やかなものであり、
そういったものが広く受け入れるまでには、
新たな時代はまだ成熟の度合いを増してはいません。


マルチ商法が広まっていったのは、
この新しい時代の水の理と、
旧来の金属の時代の価値観をミックスし、
古い価値観を頑なに持ったまま、新たなる時代の波に乗ったからです。

そしてそれは広く普及するエネルギーになると同時に、
中にある自己矛盾が世間の批判を浴びることとなったのです。


マルチ、ネットワーク、
これらは新しい時代を象徴するキーワードであることは間違いありません。
昔は「餅は餅屋」ということわざがありましたが、
今は頑固にひとつの専門家であるよりも、
マルチに活躍できる人たちを尊ぶようになってきています。

インターネットは世界中の人々を、
パソコン、タブレット、スマホといったマルチなデバイスを介し、
世界をひとつにする素晴らしいネットワークシステムです。

広く、あまねく、柔軟に相手や状況に合わせて形を変化させていく、
これに旧来のお金のエネルギーを加え、
多くの人に莫大な富を与え、
またこれからもそういった人を生み出す可能性を持っているのですから、
これが広まっていくのは必然です。

けれど本来水とお金は「水と油」同様相容れないものであり、
そこが大きな問題を生み出す元となります。

またこういった矛盾を抱えた問題は、
時代の大きな転換期の途中で必然的に起こる過渡的現象です。


マルチ商法、その組織の土壌となるのは水の理で、
資本も資格も店舗も従業員もいらず、
水の波紋が広がるよう、植物が地中に根っこを張らすよう、
商売の裾野を広げていくことができます。

そしてその広げていくエネルギーとなるものがお金です。
商材を介して金銭欲、物欲を満たしていき、
水の理を持つ組織の中では得られる収益の上限は限りなく高く、
いったん高まった欲望は抑えられることなく向上していき、
またそれを周りの人に伝染させていくようになります。

マルチをする人たちがカルト的になるのはこのお金の魔力です。
果てしのない可能性を夢見て金銭欲を肥大化させ、
周りの人たちをも同じ欲望の虜とすることにより、
自らの金銭欲をさらに満たしていきます。

なぜならば、マルチ商法で大金を得るためには、
自らが商材をひとつひとつ売っていくよりも、
自分と同じように商材を売る人をたくさん作ることが求められるからです。

『商材を売ることによってお金持ちになりたい』
自分と同じようにこう願望する人を自分の下に何人作れるのか、
これが大金を得るための最大のポイントです。

そしてその自分の下で商材を売る人たちもまた
新たな人たちに大きな欲望を持たせ、この連鎖が永遠に続くことを願います。

これは例えは悪いですが、「不幸の手紙」と同じです。
人間の持っている心の弱さを利用し、
自らの思い、欲望を満たしていこうとするのです。


マルチ系のセミナーで潜在意識の話をするのは、
気持ちを前向きにされること、
そして自らの水の理を持つ商法で、
大きな成功が現実となると夢見させるためです。

潜在意識の法則自体は歴然と存在するものであり、
それを活用してビジネス的に成功を収める人がいるのは事実でしょう。
けれど金銭欲を肥大化されるカルト的にマルチ商法は、
世間からの批判も多く、先に述べたように、
人間関係を損ねたり、家庭崩壊したり、
多大な借金を背負うことになってしまった人がいることも忘れてはいけません。
そしてそのようなことは決してセミナーで語られることはありません。


マルチ系の人たちが語る成功、あるいは成幸というのは、
結局はいかに大金を稼ぐかということになるのですが、
それはまた、ひいては周りの人たち、
世界中をも幸せにすることにつながるんだと説いています。

けれどこれはマクロ的に見ると明らかに間違いです。

今地球は壊滅的な環境破壊にさらされ、
毎年異常気象が発生し、大きな天災が起こっています。
ガイア(地球生命体)の提唱者であるラブロック博士は、
もう地球環境は復旧可能な限界点を超えたとまで言っています。

今人類に求められている最大のテーマは、
いかに地球環境を保全し、
持続可能な社会、再生可能な環境を作り上げていくかということです。
これは経済よりもはるかに優先すべき課題です。

けれど多くの人々は、このことを知ってか知らずか、
旧来の大量生産大量消費文明の中で、
いかに自分たちの経済が豊かになるかということに血眼になっています。

今求められていることは、
潜在意識を活用して物欲を満たすことではなく、
質素なくらしの中でモノ、命の大切さを知ること、
『ただ足るを知る』、この精神です。

金銭欲、物欲を喚起するマルチ商法が非難を浴びるのは、
この本来求められている人間の生き方と逆行するからであり、
彼らの提唱する潜在意識活用法で物欲を充足させ、
みんながみんな物質的にリッチになれば、
  (本当は末端の人たちはリッチにはなれません)
経済は大いに活性化するかもしれませんが、
環境負荷は一気に増大し、人類はごく短期間で滅亡してしまうでしょう。


マルチ商法ではないのかもしれませんが、
潜在意識の活用、プラス発想、お金に対する考え方、
そういった生き方全般に対して素晴らしい教えを説いている方がおられます。

その方は高額納税者として著名な方で、
多くの本を書き、信奉者はたくさんいて、
その方のお店も全国各地にあるようです。

そり方の本や冊子は何度かを目を通したことがありますが、
たしかに心に響くいいことを言われ、
またそれを実践されているがゆえ大金持ちにもなり、
多くの人を引きつけているのだと思います。


けれどその方の言われる言葉の中に疑問に感じることがいくつかあります。
その方の考え方もまた、
結局は「人間はお金がなければ幸せになれない」というものであり、
これはマルチ商法と同様、
完全に新しいこれからの時代の理ではなく、
旧来の価値観をしっかりと残し、
金属の時代の物欲を強く肯定したまま、
水の時代の心のあり方を説くからこそ大衆に受け入れられるのでしょう。

縁あって、その方の発行されている新聞を定期的にもらって読んでいますが、
そこには毎号その方の教えを受け、
人生を成功(!)させた方の体験談が書かれています。

ある号に掲載されていた女性は、
その方の教えを元に大金持ちになり、
たくさんの物欲を満たすことができ、
愛車はベンツ、時計はローレックスをしているそうです。
そしてその女性の仲間たちもみな同様で、
数台のベンツの前で女性数名が並んでいる写真が載っていました。

ベンツにローレックス、実にステレオタイプな物欲です。
しかも仲間もみな同じ、
これが本当に理想の成功者の姿なのでしょうか。

これも先ほどと同じことですが、
みんながみんな彼女と同じ成功者を目指し、
そして実際にそうなり、高級車、高級時計、
そんなものの中に幸せを見いだす価値観が世界中にあふれたら
世界はどうなるのでしょう。


今は時代の転換期であり、過渡的な現象が起こり、
それが脚光を浴びるは自然の理です。
けれどそれらは一時的なものであり、
究極のものは持続可能なものでなければなりません。
そしてそれは純粋な水の理であって、
『ただ足るを知る』、その精神です。

現在の切羽詰まった世界情勢、環境問題を見るにつけ、
一刻も早く新しい時代の価値観へと移行していかなければならないことは明かです。
今の自分にとって居心地がいいという理由で、
旧来の価値観にしがみついている余裕はありません。

けれど旧来の価値観通り物欲の権化になったとしても、
今日明日にすぐに困ったことが起こるとことはありません。
だから人は動かない、変わらないのです。

ゆでガエルという例え話があります。
火の付いた鍋に入っているカエルは、
最初のうちは温かいから気持ちがいいと上機嫌ですが、
いよいよ温度が上がって沸騰しそうになった頃には
カエルは茹で上がってしまい、
お湯から抜け出ることができなくなってしまうのです。


『ただ足るを知る』、
これはインドの貧しい子どもたちから教えてもらった大切な教えです。

お金は不要なもの、悪いものではありません。
ただそれとの正しい付き合い方が求められていて、
お金の魔力に魅せられ、その権化となってはいけないのです。

一人一人の思い、価値観、これこそが世界を大きく変えていく素となります。



2016.6.26 Sunday  
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