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2016年2月26日 ・・・ 音読、朗読

最近イベント等での司会を仕事とする女性と何度か顔を合わせる機会があり、
彼女が日本の文学作品を朗読する会を催しているのを知り、
久し振りに朗読について考えてみました。

朗読とは声に出して読み上げること、
音読との違いは、より感情を込めて読むところです。


声に出して読む音読は、
一時脳をトレーニングするためのいい方法だということでブームになりました。
音読は前頭葉に刺激を与え、頭の回転を速める効果があると言われています。

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音読は、目で文字を読み取り、それを言葉として口から発します。
これは目と口、二つの器官を同時に使う複合作業であり、
視覚情報を音声へと変換する過程で脳が大いに刺激されるものと考えられます。

「音読」をネットで検索すると、
上位にはずらりと英語学習に関する項目が並びます。
音読は英語を学ぶための極めて効果的な方法であり、
多くの英語学習者がこの音読学習に取り組んでいます。
  <音読 - Google 検索>

『英語は習うより慣れろ』とよく言われますが、
慣れるというのは繰り返し使い、学び、習熟すること、
それとともに受け身ではなく能動的に接するということです。

ただ単に聞いたり読んだりするのではなく、
自らの口や手を使い、話したり書いたり。外に向かって表現することで、
刺激を通して情報がより深く脳に刻み込まれます。

今はどうか分かりませんが、
昔は中学校に入学するとすぐに英語を習い始め、
This is a pen. などという簡単な英文とともに、
どれが主語で動詞で目的語 ・・・ といった文法事項も同時に学びました。

文章の構文といったものは国語の授業で習ったはずなのですが、
劣等生だったせいか、英語の授業で教わったことしか頭にありません。

音読もまずは英語ではなく美しい日本語の文章でするべきなのでしょうが、
英語で音読に親しむというのも悪くはありません。
英語の力をつけるという効果とともに、
脳の刺激という面では、母国語である日本語よりも、
英文音読の方がより大きな効果があるという研究結果が出ています。

音読という能動的行為が外国語習得の手段となり、
能動的人生を拓く一助となるのは素晴らしいことです。


英語の達人であった故國弘正雄氏は、
五百回、千回、とにかく徹底して同じ英文を繰り返し読むことの大切さを説かれ、
それを禅の只管打坐(しかんたざ : ただ座ること:)になぞらえ、
只管朗読と呼ばれました。

一般的に英語は音読学習と言いますが、
そこをあえて朗読とされたのは、
より徹底して繰り返し、より深くその文章に感情移入して読むべきだ、
そんな思いがあったのではないかと感じられます。


また文章を音読する際、
座って読むよりも立って、そして歩いたり身振り手振りを交えながら、
その文章の中に感情を没入していった方が、
その文章からのメッセージがより伝わってきます。
そしてそれが英文であるならば、さらに学習効果が高まるのを感じます。

音読は目と口の二つの器官を使うものですが、
それに他の様々な感覚刺激を加えると、
さらなる相乗効果が生まれます。


日本語は、世界の言語の中でも聞き分けポイントが
最も低いところにある言語だと言われています。
日本語は、ア・イ・ウ・エ・オという母音が強く、
その音が極めて低い音域に集中しているのです。

ですから日本人はその日本語の特殊性のため、
外国語を習得することが苦手です。
日本語は低い音域に音が集中しているがゆえ、
耳もそれに伴って高い音をしっかりと聞き分けることができず、
英語のRとL、FとVといった微妙な子音、
高音のわずかな音の違いを判別できないのです。

そういった意味では英語に限らず外国語を学習することは、
脳に大きな刺激を与えると同時に、
これまでほとんど使われていなかった脳や感覚の
新たな可能性領域を広げることにもつながります。


とは言うものの、それは日本語をきちんと話すことができるという
ベースの上に成り立つことであり、
今の日本人はこの日本語を話す、発音するという能力に大きな問題が生じていて、
まずはその課題を解決することが先決です。

日本語の音域が低音に偏っているのは、
日本人は元々は農耕民族であり、
田畑を耕し、強い足腰を持っていたからに他なりません。

トマティスメソッドで説かれているように、
人体の中心軸である尾てい骨から背骨を通って頭蓋骨に至る一本のラインは、
下から上へ、低音から高音へと
共鳴するポイントが少しずつ上へ向かって推移します。
低い音は腹を揺さぶり、高い音は頭に響いてくるのです。

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今の日本人は大地から離れた暮らしをし、
下半身の力が衰え、
日本語特有の低い音を正確に発することが難しくなっています。

あの~、どっちかっていうと~、
歯切れが悪く、母音をきちんと発音できず、
言葉の最後に締まりがありません。

これは腹に力が入っておらず、
生命力の源である肛門が緩んでいるからこういうことになるのです。

また他のページでも何度か書いたように、
脳と腸とはまったく同じ構造を持ったフラクタル(自己相似形)な関係であり、
下半身が衰え、体の中心軸をきちんと保つことができなければ、
表面的な思考を司る脳と、深い思考を司る腸は正常な関係を結べず、
深く物事を考えることなく、表面的刺激に左右される人間になってしまいます。


東京医科歯科大学名誉教授の角田忠信先生は、
聴覚と脳の研究から、大脳両半球の働きを解き明かされました。
日本語を母語として育った人間は、
虫や鳥の鳴き声、波や雨音などの自然音を言語脳である左脳で処理し、
他の言語で育った人間とはまったく異なる脳の働きをするということを
明らかにしました。

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この脳の働きこそが、
日本の文化を育てる大きな役割を果たしてきたというのは
想像に難くないことですが、
今のように日本語をきちんと発音できない日本人が多くなってくると、
この素晴らしい日本文化が壊れてしまうのも
時間の問題ではないかと危惧せざるえません。


日本の伝統文化を守るためにも、
日本語を正しく、美しく発音した音読、
そこに日本人的感性を加えた朗読ができるよう、
またするように心がけなければなりません。

2016.2.26 Friday  
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