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2014年5月28日 ・・・ 異なる文化

人はみな一人一人価値観が違うもの、
そのことは頭では分かっているものの、
つい他人も自分と同じように考えると思ってしまい、
自分の価値観で他人を推し量り、
その価値観を相手に押しつけてしまいがちです。

幅の広い豊かな人間とは、
その他人の価値観を受け入れる度量の深い人のことであり、
そうなるための有効な方法のひとつが、
いろんな価値観の人と接し、
様々な経験を積むことです。

外国に行く最も大きなメリットは、
日本とはまったく異なる環境に身を置き、
日本で常識と思われている価値観が、
決して万国共通のものではないことを身を以て知ることだと感じます。

世界には日本とは環境も文化も風習も異なる国や地域がたくさんあります。
それらはすべていい悪いではなく、
それらが生まれ、育まれてきた歴史があり、
その歴史の流れの必然性を中に存在しています。

インドを旅した人は、
一度行ってもうこりごりだと感じる人と、
こんな面白いところはないと感激する人と、
ハッキリ二つに分かれるということをよく聞きます。

12億の人口を抱えるインドはひとつの国の中で多様な文化や言語を持ち、
きれいなところと汚いところ、喧噪渦巻く大都会と自然が豊かな農村、
富める者と貧しい者、多くの人望を集める聖者と他人を搾取して暮らす犯罪者、
すべての面で価値観や様式が多彩であり、
その生命のダイナミズムそのものとも言える混沌、雑然とした多様性が、
人を引きつけ、またはねのけるのだと思います。

自分は世界中そんなにたくさんの国を旅してきたわけではありませんが、
インドほど興奮に満ちた面白い国はないと感じます。
ごちゃごちゃと汚く、騒がしく、貧しくても活気あふれるインドは、
ほとんどすべての面で日本と対極であり、
それが人間としての本能的好奇心を刺激します。

インドに行くと、もっと自分に素直に生きていきたいという思いと、
より多様な価値観を受け入れられる自分になりたいという思い、
この二つが湧き上がります。


人間の視覚は人体の外側に向けられていて、
人間は一生死ぬまで自分の顔を直接見ることはできません。

この時空の基本原理は相対であり、
ひとつの比べることのできる存在があって、
初めて自分や対象物の価値を知ることができます。
『人の振り見て我が振り直せ』のことわざ通り、
他人や周りを鏡として己を振り返り、学ぶことができます。

その点で、日本と対極にあるインドという国は、
互いに学び、気づき、高め合うことのできる最高の存在であり、
よきパートナーとなり得る国だと感じます。


インド人が日本に来ると、
きわめて近代的で清潔なトイレに驚き、
カメラのシャッターを切ります。

自分はインドに行き、さすがに汚れきったトイレは写真に撮ろうとは思いませんが、
こんな水が漏れまくった蛇口などはとても興味深く、
周りのインド人たちに笑われながらもカメラに収めます。



こんな状態のものをほったらかしておくインド人は、
ずぼらで不衛生でダメな民族だと言えばそれまでですが、
これも価値観の違い、寛容さの表れと感じたならば、
それはそれで学ぶべきところがあります。


日本の製品は、車でも家電製品でも、
その品質の高さは世界トップラスです。
それと比べてインドのものは仕上げが雑で、低品質のものが多いのは事実です。

インドでは不織布で作られた袋が一般的によく用いられています。
そこにプリントしている絵柄がとてもインドっぽく、
値段も日本円で十円から数十円程度と安いので、
いつも大量に買い、日本の友人たちに何か渡す際にはその袋に入れて渡し、
そのチープっぽさが魅力的だと喜ばれています。

けれど見た目がチープっぽいのはいいのですが、
実際に品質が劣るのは困りものです。
今日知り合いにその袋に荷物を入れて渡そうと思ったら、
二個続けて持ち手のすぐ下が横に裂けてしまいました。



すぐに壊れてしまうものを作るのはよくありませんが、
その代り、インドには少々不具合のあるものでも我慢して使う、
工夫して使うという素晴らしい文化があります。
これは現在の環境に適応していくために仕方がないという面もありますが、
どんな環境の中でも、その与えられた条件の下、
文句を言わず最善を尽くすインド人たちの姿には心打たれます。

またインドには数十年前の日本がそうであったように、
壊れたものは直して使うという修理文化が息づいています。
昨年も今年も、インドで二度にわたって大きなトランクケースのキャスター(車輪)を
壊してしまいましたが、
その二度とも、インドの修理職人の手によって見事な回復を遂げました。
しかも修理代金は日本の貨幣価値で言えばきわめて安価です。



消費文化を勢いよく発展させていくためには、
ものを修理して使うことは必ずしも善ではありません。
ものは壊れたら買い換える、修理技術よりも高度な製造技術を磨く、
その考え方の方が文明を効率よく高みへと導いていくともいえます。

けれど限りある地球資源の元で暮らす人類は、
こういった古式とも言える修理文化を見直す必要に迫られています。

来月から行くビジャプールには、
日本で普段はき慣れているジーパンを日本持っていくつもりです。
ジーパンは丈夫で地面に直接座ることができ、
たぶん蚊がたくさんいるでしょうから、
やはり長ズボンの方が安心できます。

そのジーパンは年季が入っていて、
全体的にはしっかりしているものの、
お尻のポケットのあたりが二本とも薄くなり、穴が開きかけています。
そこで今日近所の洋服のリフォームをする店を訪ね、
修理をするとどのくらいかかるかを聞いたのですか、
当て布を当ててミシンがけをする修理は、
最低でも税込み2160円からだと聞いて驚いてしまいました。

今はその金額より安いジーパンがたくさん店に置かれています。
そのすべては外国で縫製されたものでしょうが、
これでは日本で修理文化が廃れるのは無理がありません。

ジーパンは取りあえずアイロンの熱で接着できる補修布で修理し、
インドに行ってからキチンと直してもらうことにしました。
たぶんインドだと、日本の十分の一以下の値段で修理できるでしょう。


インドへは6月14日の午前中に関空を発ち、
その日は香港経由でインドの首都デリーに到着し、デリーで一泊し、
翌日インド最大のIT都市でありカルナータカ州の州都バンガロールに向かい、
その翌日に夜行列車でビジャプールへ行き、
次の17日、ビジャプールのコスモニケタン日印友好学園の始業式に参加します。

インドは今が最も暑い季節で、二ヶ月間の長い夏休みがあり、
来月17日の始業式から新しい年度が始まります。

そのコスモニケタン学園の写真付き資料をいただきました。
PDFファイルで8ページ、これを見ると学校の様子がよく分かります。
是非ともご覧ください。
  <コスモニケタン学園関連写真集>

資料の中で、小さなバスに大勢の子どもたちが乗り込んでいますが、
このバスは、このたびの夏休みの間に大きなものへと換えられるそうです。

インドはトラックの荷台にたくさんの人が乗ったり、
子どもがバイクを運転したり、
向い側から対向車が来ても、車線を大きくはみ出して追い越しをしたり、
とにかく道路交通法はあってなきにしかりの状態です。

インドの道路はインド文化が顕著に表れたところであり、
日本の文化と大きく異なることを実感します。


そしてそれよりもっと理解しがたいのは、
やはりカーストという身分差別制度に基づく社会の成り立ちです。

これは日本人にとって感覚的に理解できない異様なものであり、
どんな日本人と話をしても、
このカースト制度を肯定する意見を聞くことはありません。


これは古くは寺院に神への捧げものとして娘を差し出し、
性的に搾取されるようになったデヴァダーシーという風習を、
現在も低く貧しいカーストの家が、
生きていく手段として引き継いでいる姿を描いたものです。



ここで取材されているいくつかの町は、
みな今回行く南インドカルナータカ州北部のビジャプールという町から
そう遠くないところです。

他国の悪習とも言える風習を非難することは簡単ですが、
それが生まれた歴史や土壌を考察していかなければ、
表面的、ある特定の一現象の非難となり、
的外れで問題解決からはほど遠いものとなってしまいます。

人類は過去や現在の世界の歴史の中で、
これよりももっとひどい民族大虐殺のようなことを繰り返してきています。

そんな中でも、文化の違いを超え、
生命、人格の尊厳を守るための絶対的価値観、善なるものを見出すことは、
大きく生い茂った藻の中からたった一粒の真珠を探す出すが如く難事です。


文化や風習は異なって当たり前です。
どんな悪いと思われるものでも、またいいと評価されるものでも、
絶対的な善悪はなく、善と悪、両方の要素を必ず併せ持っています。

永続的な貧困、被差別階層を生むカースト制度でさえも、
負の側面ばかりではなく、その中から光を見出すことが、
客観的に意見を述べるための最低条件であると考えます。

そしてそれができ、初めて次なるステップを踏むことができます。
過去の全否定、全肯定は、
人を間違った方向へと導き、誤った判断を下す元となります。


善悪の判断を下すことなく、
『みんな違ってみんないい』、
このように訴えかける金子みすゞの世界は、
天国から、あるいは達観、解脱した近未来からのメッセージなのだと思います。

『みんな違ってみんないい』、
この言葉をすべての人間が、
笑顔とともに語れる日が来ることを願います。



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2014.5.28 Wednesday  
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